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司法書士など専門家に遺言書作成を依頼して、何度か打ち合わせを重ねるかと思います。
しっかりとした丁寧な遺言書、また相続人のことを思って遺言書を作ろうとすればするほど、司法書士さんやご家族との打合せに時間を要します。
その手続き進行中に、遺言者(例えば、遺言書を作成しようとしているお父様)が緊急入院されたらどうするべきでしょうか?
ご自身がいつ亡くなり、緊急入院して意思表示ができなくなるのか誰にも分りません。
さて、どうしましょうか?
1.遺言書作成を断念する
2.元気になって退院してから、再度遺言書作成にとりかかる
3.入院先の病院まで、司法書士や公証人に出張してもらい、病院で遺言書を作成する
4.他に良い方法があるのか、司法書士さんに尋ねる
5.その他
このような、遺言書をまだ準備できていないときに、急に病気になったり、自分で字を書けなくなったときにする法律の手段として「危急時遺言」という制度がございます。
以下に、「危急時遺言(民法976条以下)」、この中でも最も一般的な
「一般危急時遺言」について要件をみていきましょう。
「疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、
証人3人以上の立会いを以って、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。」
緊急入院をして、生命の危険に迫っているということですが、この判断はどのようにするのでしょうか?
自分自身が、そう判断することで構わないと解釈されています。
例え主治医の判断を受けていなかったとしても、この遺言(危急時遺言)を利用することは可能です。
実際は、いままで関わってきた司法書士や顧問税理士のアドバイスをもとに、この遺言(危急時遺言)を準備するケースが多いと思います。
証人は、誰がなっても良いわけではありません。
法律では、①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、4等身内の親族、書記及び使用人を証人となれない者として規定しています
(民法982条、民法974条)。
遺言書で財産をもらう方(受遺者)は、利害関係がありますので、証人立会人になれないことは、ほかの遺言と同じです。
また、、「推定相続人」、すなわち遺言者に最も身近な遺言者の配偶者や子供が証人となることができないという点については、注意をしてください。
ただ、これらの近しい親族が同席しているだけでは遺言の効力が否定されるわではありませんが、実際遺言をするときには、別部屋で待機してもらう方が良いです。
①証人3名立会いのもとで、遺言者が証人のうちの1名に対して、遺言の趣旨を自分の言葉で話し、その内容を証人に言葉通り記憶させ、
②遺言者の発言を受けた者がその内容を筆記し、
③筆記した内容を遺言者及び証人に読み聞かせる等して内容に誤りがないことを確認し、
④その後、証人3名が署名・押印をする。
この手順で、危急時遺言は完成となります。
なお、押印に使用する印鑑は、決まりがありません。
認印でも、実印でも構いません。
また、証人の署名・押印は、遺言者の面前で行うようにしてください。
さらに、弁護士があらかじめ作成した草案の証人による読み上げは有効でしょうか?
これについても、最高裁判所から平成11年に有効との判例が出ています。
上記に基づいて作成した遺言書を、「遺言の日から20日以内に、証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に対して請求を行い、家庭裁判所の審判を得ること」が必要になります。
これをしなければ、せっかく作成した危急時遺言も有効になりませんのでご注意ください。
●その他の注意点
①遺言者が普通の方式で遺言ができるようになった時から「6ヶ月間」生存した場合には効力を失う(民法983条)
②審判確定後も、遺言の有効・無効について争われる可能性がある
③確認の審判を得ていても、遺言者が亡くなった後は「検認手続」を経る必要がある
以上。
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